不動産売却に際して「委任状」が必要になるケースと注意点・書き方・書式について徹底解説!

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不動産を売買する際は、物件の売主・買主・不動産仲介会社が立ち会って不動産売買契約を行います。しかし、さまざまな事情により、売主本人が不動産売買契約手続きに立ち会えないことがあります。

そのような場合は、代理人を選定し「委任状」を作成することで、自分の代わりを第三者に依頼することができます。

また、契約の前にはいろいろと調査をしなくてはならない事項があり、契約のために揃えるべき必要な書類は多岐にわたります。売買契約書や重要事項説明書などの契約書類以外にも、公的書類のような役所で請求し取得する必要があるものも存在します。

特に公的書類については、役所に出向いて取得しなくてはならないケースが多いため、代理人に書類の取得を請求する方が効率的な場合もあります。

登録免許税や不動産取得税の算出のために必要な「固定資産評価証明書」は、原則的には本人しか取得できないため、司法書士や不動産業者などの代理人に頼むことが一般的です。しかし、重要な書類であるため、本人以外が取得する際は、「委任状」がないと受け付けてもらえません。

今回は、不動産売却の流れで重要である、事情により売買契約の立会いや書類取得を本人ができない場合の、代理人を選定し委任する際の手続きや注意点、「委任状」の書き方について解説します。

「委任状」ってなに?書き方や書式を正確に把握しよう!

「委任状」ってなに?書き方や書式を正確に把握しよう解説画像

委任状とは、「特定の人に、ある一定の事項を委任したことを記載した書類」のことをいいます。

よく、市役所や法務局など、公的な機関で書類を請求したいとき、本人が行けない場合に代わりの人に取りに行ってもらうことがあります。その際、「○○様の代わりに書類を請求しに来ました」と窓口で伝えても、役所側からすると、本当に本人から依頼されてやってきた人かどうかを判断する術がありません。

その書類が誰でも取得できるものであれば、仮に依頼されていない人だったとしても問題はありませんが、個人情報が記載されている書類など、原則的に本人しか請求できない書類があります。

そのため、本人から正式に依頼があってやってきたことを証明するための書類が必要です。それが「委任状」です。

また、不動産の売買をする際、通常は買主と売主の両者が立会い売買契約を締結しますが、事情があって立ち会えない場合は、第三者に委任することができます。

そのようなときに、売買契約の締結を代理で委任することを証明するために必要な書類が「委任状」です。

高額な取引を第三者に任せるわけですから、書き方や書式についても不備や漏れがないように正確に準備をしなくてはなりません。

不動産売却時に代理人に委任するのはどんなとき?

不動産売却時に代理人に委任するのはどんなとき?解説画像

不動産の取引時、やむをえない事情から売主が契約手続きに立ち会えない場合があります。その場合は、売主本人が代理人を選任することによって、代理人が不動産手続きを本人に代わり行うことができます。

以下の場合は、本人に代わり売買契約を代理人に委任できます。

  • 取引を行う対象不動産が、本人の所在地から遠方にある場合
  • やむをえない事情により契約のために時間を作ることが困難な場合
  • 共有持分の不動産を売却する場合

まず、本人の公的書類に関しては、身分証明書を持参するなどて本人が取得できます。しかし、不動産売買に必要な書類は種類が多く複雑で、一つひとつが非常に重要な書類であるため間違いが許されません。

そのため、本人が取りに行っても、結果的に必要ではない書類を取得してしまう可能性もあります。そのようなときは代理人に委任状を託し、書類の取得を請求することをおすすめします。

また、役所は基本的に、平日の朝から夕方までしか窓口が開いていません。日中は仕事や家事で忙しく、書類の取得に出向けない方も、代理人に依頼し取得をお願いするといいでしょう。

その他にも、海外在住で日本にいない時期に、日本の不動産の売却をする場合や、怪我・病気で入院生活を送っており、売却の手続きに協力できない場合なども、代理人を選定し依頼した方が良いといえます。

なお、代理人は一般的に、委任者の家族の方や近しい間柄の方(親戚など)、司法書士が選定されます。

なぜなら、委任状を介した書類取得では、個人情報が記載されている書類を他人が取得するため、いくらでも悪用できてしまうからです。そのため、代理人の選定は絶対に軽はずみにしてはならず、慎重に選ばなくてはなりません。

委任状作成の基本書式や書き方のポイント

委任状作成の基本書式や書き方のポイント解説画像

不動産売却時の委任状の書式に指定はなく、パソコンでも手書きでもかまいませんが、必ず入れなくてはならない事項がいくつかあります。

まず、大前提として、「本人が不動産売買あるいは売却手続きに立ち会えないため、第三者に依頼し、手続きを実行する」旨を記載しなければなりません。

つまり、「本人は事情により手続きできないため、代理人に依頼した」ことを、明記する必要があるのです。
具体的には、下記の項目を記載する必要があります。

必ず記載するべき項目
  • 委任者の住所
  • 委任者の氏名
  • 委任者の自筆による署名(押印が必要な場合もある)

※委任状自体をパソコンで作成したとしても、署名は自筆のものでないと認められない場合があります。

  • 受任者の住所
  • 受任者の氏名
  • 該当する不動産(土地・建物)に関する情報(面積・所在地・建物構造など)
  • 委任内容(委任した行為の内容の詳細)

委任する内容の範囲は特に重要です。なぜなら、委任範囲の権限を明確にしておかなければ、委任者と受任者の認識がずれ、代理行為に関してトラブルが生じる可能性があるからです。

そのため、不動産売買の契約締結に関する権限、手付・売買代金の受領行為、引き渡しに関する権限についてはあらかじめ詳細を確認し、両者が納得したうえで作成する必要があります。

委任状作成時の注意事項

委任状作成時の注意事項説明画像

委任状を記載するうえで、最も注意をしなくてはならないのは、「どの範囲まで権限があるか」ということが明確化されているかどうかです。

例えば、不動産の売却時には、「固定資産評価証明書」という書類を取得することがあります。この「固定資産評価証明書」は、管轄している市町村内にあるすべての不動産(固定資産)の評価額が載っている書類です。

つまり、個人の不動産に関するすべての資産状況がわかる大事な書類なのです。その書類を見れば、委任者はその市町村の中で、誰がどの程度の不動産を所有しているかすぐに知ることができます。言ってしまえば、不動産に関しての資産背景が公開されてしまうのです。

例えば固定資産評価証明書解説画像

ちなみに、不動産の売却時になぜこの書類が必要かというと、売却時に関わる費用において、固定資産税評価額を基準として算出される項目が非常に多いからです。特に「登録免許税」「不動産取得税」「固定資産税」の税額計算の際は、「固定資産評価額」に対して、決められた税率をかけて算出します。

それほど重要な個人情報が記載されている書類を代理人に頼むのですから、権限の範囲を明確に定めておく必要があるのです。委任事項(委任権限の範囲)が記載されずに提出された委任状は、委任内容が明らかでないため不審に思われ、受け付けてもらえない可能性があります。なお、コピーした委任状の提出は認められず、原本の提出が求められます。

また、一件の売買契約の手続きの中で、複数の請求書類があり委任状を用意する場合は、請求する書類「ごと」に委任状が必要です。例えば「売買契約に必要な書類の取得のため」など、曖昧な内容の表記をした場合は、受け付けてもらえない可能性が高いので注意しましょう。

そして、複製が簡単な鉛筆やシャーペンや消えるボールペンなどは受け付け不可な場合が多いため、ボールペンでしっかりと記入する必要があります。

委任状作成に当たって間違いやすいこと

委任状作成に当たって間違いやすいこと解説画像

先述したとおり、委任状の書式は正式に定まってはおらず、自分自身で作成する必要があります。しかし、不動産についての知識がない方が委任状を作成するのは困難なため、一般的には、仲介をする不動産会社や司法書士が作成します。

しかし、決して丸投げにしてはいけません。記載するべき事項、特に委任する権限の範囲などは、必ず本人が確認しましょう。この、本人による確認が非常に重要です。

なぜなら、委任状とは、本人が受任者に権限を与えたことを証明する書類であるため、後々、契約内容や委任内容に間違いがあったと気づいても、委任状をもとに行った行為は、本人が行ったことと同等とみなされ、簡単に取り消しや撤回をすることができなくなるからです。そのため、委任状の作成は自己責任のもと注意が必要なのです。

委任状以外に必要なものとは

委任状以外に必要なものとは説明画像

本人確認のために、委任状の提出の際は受任者の身分証明書を求められることがあります。

  • 委任者の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
  • 委任者の実印
  • 委任者の住民票(3ヶ月以内のもの)
  • 代理人の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
  • 代理人の実印
  • 代理人の本人確認書類(運転免許証など写真付きのもの)

もしも、会社の用足しで書類請求に行った場合でも、いくら会社名が記載されているからといって名刺では本人確認とみなされません。上記の公的書類が必要です。

委任をする際の注意点

委任をする際の注意点解説画像

不動産の取引や、個人情報が載っている公的資料の請求を委任することは、非常に重要な任務を第三者に依頼するということです。

書式の書き方や、提出書類、そして委任状の内容に不備がないのはもちろんのことですが、他にも注意をしなくてはならないことがあります。

委任の際は次の点に注意しましょう。

委任者は信頼のおける人物を選ぶこと

法律上、任意代理の場合は、選定する人物の基準や条件などは定められていません。しかし、代理人は本人にとっても重要な財産の売買の代理を担う重要な人物です。

間違っても「誰でもいいや」と安易な選定はせず、信頼のおける人物を必ず選定しましょう。特に親族や身内、または、このような業務の専門家(弁護士や司法書士など)の中から選定をすることがトラブル防止につながります。

委任者とはこまめに報告・連絡・相談を!

委任をすると、本人に代わり代理人が不動産売買の手続きを行います。そこで忘れてはいけないのは、受任者が行った行為の効果は、本人が行ったことと同等の効力を持つことです。

いくら信頼できる間柄の人を選任したからといって、決して任せっきりにせずに、細かい進捗状況の報告を受けられる関係性・状況を作っておきましょう。

委任状が必要なケースと注意点のまとめ

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冒頭で解説したとおり、通常、不動産の売買取引を行う際は、売主・買主・不動産仲介会社が立会い契約締結や決済作業を行います。しかし、遠方に住んでいる場合や、共有持分での相続不動産で調整が難しい場合など、直接立会えない事情もあるでしょう。

そのような場合は代理人に委任し、円滑に取引を進めてもらわなくてはなりません。そのためには、委任状の内容は非常に重要な事項です。記載方法を間違えると、思ってもいないトラブルに巻き込まれてしまうかもしれません。そして誰を選定するのかも、同様に重要です。

不動産売買を第三者に委任する場合は、委任状の書き方や委任者選定のアドバイスを求めて、その道のプロである不動産会社や、法律の専門家の司法書士に相談してみましょう。