注文住宅の「諸費用」って何?内訳と費用をシミュレーション

「注文住宅で家を建てたいけど費用がいくらかかるのかわからない。」「土地や建物以外に何にお金がかかるの?」と悩んでいませんか?注文住宅には土地と建物に加え、諸費用がかかります。本記事では、この諸費用とは何か、内訳と費用をシーン別に紹介します。

実際にかかる費用を明確にするため、2500万と3000万の家を建てると想定し、シミュレーションをしていますのでぜひ最後まで読んで、予算決めの参考にしてください。

注文住宅の諸費用とは?シーン別に内訳を紹介

諸費用とは、家を建てるときに発生する手数料のことです。税金や書類申請の手続きにかかる費用があり、一般的には土地と建物の費用総額の10%〜12%が目安です。

注文住宅を建てるときに諸費用がかかるシーンは大きく分けて3つあります。シーン別に内訳を紹介します。

土地購入時の諸費用

土地を所有していない場合は、土地から購入する必要があるため諸費用がかかります。土地購入にかかる諸費用には下記の項目があてはまります。

手付金 売買契約時に土地の売主へ直接支払う費用(契約締結後は土地代の一部となる) 相場:売買代金の10%前後  
仲介手数料 土地の仲介業者(不動産業者)に払う費用 相場:購入代金(税抜)×3%+6万+消費税 (購入代金400万円以上の上限)
登記費用 所有権移転に必要な登記登録費用 登録免許税+司法書士への報酬 相場:登録免許税  固定資産税評価額の2%(軽減措置 1.5%)    司法書士   3万~5万
税金 売買契約書に貼る印紙税、不動産取得による不動産所得税 相場:印紙税     1000万~5000万は一律2万円(軽減措置 1万円)    不動産取得税  取得した不動産の価格×3%           (軽減措置  取得した不動産の価格×3%×1/2-控除額)

不動産取得税を計算する際の「取得した不動産の価格」は、固定資産評価基準によって評価された、固定資産課税台帳に記載されている価格のことを言うため、購入価格ではありません。

不動産所得税には軽減措置がありますが、2024年(令和6年)3月31日が期限です。

詳しい計算方法については「不動産取得税 | 税金の種類 | 東京都主税局」から確認できます。

このほかにも、以前建っていた建物の解体費用や、不動産にかかる税金を所有日数に応じて売主と買主で負担を分ける固定資産税清算金がかかる場合があります。

建物建設時の諸費用

建物を新築する際にもさまざまな諸費用が発生します。とくに税金関係はその都度、現金での支払いが必要になるため、あらかじめ必要な諸費用の項目を知っておく必要があります。どのようなものがあるか下記の表で確認しましょう。

地盤調査費用 建物を建てる前に地盤調査を行うための費用。調査の結果、補強が必要と判断されれば補強費用がかかる。 相場:地盤調査費用  5~30万円(調査方法により異なる)   地盤補強費用  1坪あたり2~5万円すでに建物が建っている土地を購入した際も地盤調査は行い、場合によっては補強費用も必要になります。
建築確認申請費用 建築確認申請書の作成費用 相場:3万円
ライフラインの引き込み費用 上下水道・ガス管の引き込み工事にかかる費用 相場:水道 30~50万円   ガス 10~20万円 (引き込む長さによって費用は異なる)
税金 建築工事契約書に貼る印紙税、不動産取得による不動産取得税 印紙税 1000万~5000万は一律2万円(軽減措置 1万円) 不動産取得税 固定資産税評価額-1200万×3%
登記費用 建物の所有権登録に必要な登記費用 相場:固定資産評価額の0.4%(軽減措置 0.1%~0.15%)
設計管理費 建築設計や工事の管理にかかる費用、申請手続きなども含まれる 相場:工事費の10%~20%
地鎮祭・上棟式 地鎮祭や上棟式にかかる費用 相場:5~10万円(地域によって異なる)

地盤の補強費用に関しては、実際に地盤を調査をしないと、必要の有無がわからないため、できるだけ余裕を持って費用を準備しておくことが重要です。例えば30坪の土地にかかる地盤補強費用は30坪×1坪あたりにかかる補強費用=150万」といった計算になるため、最低でも150万円が必要です。

地盤が弱いと液状化や家が傾くなどのリスクがあるため、必要に応じて補強しておくことをおすすめします。

住宅ローン契約時の諸費用

住宅ローンの契約時にも諸費用はかかります。印紙税など現金で必要な諸費用もありますが、ほとんどは金利に上乗せで支払う形です。

ローン契約時にかかる諸費用は以下のものがあてはまります。

住宅ローンの貸借契約時の印紙税 貸借契約書に貼る印紙税 相場:1000~5000万円は一律2万円
融資手数料 融資にかかる手数料。定額型と定率型があります。 相場:融資額の1~3%
ローン保証料 連帯保証人の代わりに、保証会社に保証してもらう為の手数料。一括で払う場合と金利に上乗せする場合があります。 相場:融資額の0.5~2%
団体信用生命保険料 ローンの返済期間中に借主が死亡または高度障害状態になった際に、残りの支払いを免除してくれる保険です。金利に含まれていることが多く、現金で支払う必要はありません。
火災保険料・地震保険料 火災保険と合わせて地震保険に加入することが多い傾向です。補償の内容や金額、建物構造によって保険料は変わります。 相場:10~40万円

火災保険料・地震保険料は相場に幅があります。補償の内容や金額だけでなく、災害時のリスクを反映して建物の構造や地域によっても異なるからです。

例えば地震保険の場合、耐震性の高い鉄筋コンクリートの建物には耐震等級割引が適用されるため、木造よりも保険料がお得になります。

注文住宅に必要な費用のシミュレーション事例

注文住宅を建てる際には、諸費用を含め実際にどのくらいの費用が必要になるのか具体例を紹介します。土地の所有の有無や住宅ローンの借入額によってかかる諸費用は異なるため、どの程度の差がでるのか、比較していきます。

A 土地を所有していない場合

  • 土地 2000万 (1400万)
  • 建物 2500万    (1500万)
  • 住宅ローン 借入額 4000万 頭金500万

  

B 土地を所有している場合

  • 建物 3000万(1800万)
  • 住宅ローン 借入額 2500万 頭金500万

()内は固定資産税評価額 土地は7割、建物は6割

2024年(令和6年)3月31日までに宅地を取得した場合で計算       (単位:万)

項目 計算式・相場
手付金 土地代の10%前後 200
土地仲介手数料 2000×3%+6+消費税 72.6
登録免許税 固定資産税評価額の2%(1400×2%) 28
司法書士への報酬 3~5万円 3~5
印紙税 1000~5000万円は一律2万円 (軽減措置 1万円) 1
土地不動産取得税 課税評価額×3%×1/2-控除額 0
地盤調査費用 5~30万円 5~30 5~30
地盤補強費用 1坪あたり2~5万円 60~150 60~150
建築確認申請費用 3万円 3 3
ライフラインの引き込み工事費用 水道:30~50万 ガス:10~20 水道:30~50 ガス:10~20 水道:30~50 ガス:10~20
建築工事契約書の印紙税 1000~5000は一律2万円 (軽減措置 1万円) 1 1
建物不動産取得税 固定資産税評価額-1200万×3% 9 18
所有権保存登記 不動産価格の0.4% 6 7.2
設計管理費 工事費の10~20%
地鎮祭・上棟式 5~10万円 5~10 5~10
貸借契約書の印紙税 1000~5000は一律2万円 2 2
融資手数料 融資額の1~3% 40~120 25~75
保証料 融資額の0.5%~2% 20~80 12.5~50
団体信用生命保険料 年0.3%の金利上乗せ
火災保険・地震保険(5年補償) 10万~40万 補償内容や構造によって異なる 40 40
諸費用 合計 535.6~827.6 218.7~456.2

諸費用の相場は土地と建物の合計の10%〜12%が目安です。

  • 2500万の建物  2500+2000(土地代)×10%〜12% 450~540万円
  • 3000万の建物  3000×10%~12%        300~360万円

シミュレーションの結果、相場よりも上回ることがわかりました。

諸費用の支払い方法は?ローンに組み込む際のデメリット

諸費用のすべてを現金で支払う必要はありません。手元の現金をすこしでも多く残したい場合はローンに組み込むことも可能です。諸費用によっては現金払いが必須の項目もあるので、支払い方法の確認やローンのデメリットについて紹介します。

現金払いが基本

諸費用は、現金払いが基本です。諸費用の発生するタイミングは住宅ローンの開始前のものが多く、ローン適用前は支払い方法が現金に限られてしまうからです。税金関係や司法書士の先生への依頼料などの少額のものから、土地の手付金のような高額な費用まで現金で用意する必要があります。目安として、諸費用の予算の半分を現金で用意しておくと安心です。

ローンに組み込むことも可能

諸費用の項目によってはローンに組み込むことも可能です。仲介手数料や地盤調査費用など土地購入時や建築時にかかった諸費用はローンに組み込めば、現金の支払いを少なくできます。入居後にかかる固定資産税や引越費用、家具家電はローンに組み込めないため、別途費用を準備する必要があります。

借入額が多くなり返済が負担になる

諸費用をローンに組み込む際のデメリットは、ローンの借入金額が多くなるため、審査に通りづらくなったり、月々の支払いの負担が増えたりすることです。

住宅ローンの支払いが滞ると、せっかくのマイホームを手放さなくてはいけなくなるため、ローンに組み込むか慎重に考える必要があります。

返済のイメージができない方は、ローンの返済計画のシミュレーションをしてみるのをおすすめします。

注文住宅の諸費用を抑えるコツ

諸費用の合計は高額になるため、限られた予算の中で家づくりをしたいと考える方は、少しでも諸費用を抑えたいのではないでしょうか。諸費用を抑えるためにやるべきことを3つ解説します。

見積もりをとって比較する

注文住宅に必要な諸費用は企業によって異なり、不明確なことが多いため、複数社に見積もりを依頼し内容を見極めることが大切です。

例えばハウスメーカーが土地を持っている場合、仲介手数料がかからなかったり、解体費用込みで土地を売り出していたりするケースがあります。

またローン会社の比較も重要です。事務手数料や金利、補償内容の違いなど複数社で比較し、自分にあったローン会社を選びましょう。

保険内容の見直しをする

保険内容の見直しは保険料が抑えられるため、諸費用の削減につながります。火災保険や地震保険は本当に必要な補償だけついていれば問題ありません。

案内された補償内容のまま契約をしてしまうと、ほとんどの場合必要のないものまで保険の対象にされてしまいます。ハザードマップを確認して自分の土地にはどんなリスクがあるのか、どんな補償が必要なのか確認しましょう。

国の補助金制度を利用する

国の補助金制度を使うことで、通常よりもお得に家を建てられます。ただし、補助金は先着順で予算がなくなり次第、終了してしまうため、早めに利用申し込みをしておくことがポイントです。

また、補助金ありきで予算を立ててしまうと利用できなかった時に、予算が足りなくなるため注意が必要です。2024年2月現在で実施している補助制度は以下の通りです。

  • 子育てエコホーム支援事業 
  • 税金の優遇制度(印紙税、不動産取得税)

どちらも、2024年(令和6年)3月31日まで実施しておりますが、一定の条件を満たす必要があるため、事前に確認しておくことが重要です。

詳しくは「子育てエコホーム支援事業」で、ご確認ください。

注文住宅は予算を多めにとっておくことが鍵

注文住宅を建てるためには、土地と建物以外に諸費用がかかり、発生するタイミングは大きく分けて3つあります。今回のシミュレーションの結果、相場を大きく上回ることがわかりました。

  • 土地購入時    約300万円
  • 建物建築時    約280万円
  • 住宅ローン契約時 約250万円

諸費用は現金での支払いが基本となるため、まとまった資金を用意しておく必要があります。項目により、ローンに組み込むこともできますが、借入金額が多くなり月々の返済が負担になる可能性があるため、注意が必要です。

諸費用の中には地盤補強費用のように土地を購入して実際に調査をしないと必要の有無がわからない項目もあります。相場はあくまで目安として考え、予算を多く確保しておくことが、理想の家づくりに繋がる鍵となります。